2005年10月2日
アーティスト、オノ・ヨーコさんが十勝にやって来ました。 初の出来事です。
2002年に、十勝・帯広で「国際現代アート展デメーテル」が開催されました。
デメーテルに招聘された作家のひとりであったオノ・ヨーコさんの作品は、長年の作家活動の中でも何度か登場してきたインスタレーション、「sky tv」でした。
81台のモニターが、広大な競馬場内に点在する馬房の天井や、床に置かれました。一通り全てを巡るのは至難のコト。映されるのは競馬場上空のリアルタイムの「大空」です。
リアルタイムの事ですから、雨の日や曇の日には寂しい映像になります。反対に雲一つない地元で俗に言う「十勝晴れ」の日は真っ青なのですが、あまりに青いのでモニターが壊れてしまったのかと勘違いしてしまうこともありました。
夏のモクモクした雲。秋の始まりのウロコ雲。夕暮れ時のオレンジ色。薄紫に染まる空。そうした光景がモニタの中を通りすぎていきました。
正直、最初のころタカサカは「sky tv」に良い印象がありませんでした。
ヨーコさん本人が一度も現地に入らなかった事も一因ですが、どこでも見上げれば空がある十勝・帯広に育つタカサカにとって、モニターに映し出される「空」に意味を感じることが出来なかったのです。
「想像してごらん…」
ヨーコさんの作品は「言葉」です。
名曲ジョン・レノンの「イマジン」はヨーコさんの「イマジン」と言っても差し支えないでしょう。
ヨーコさんの作品理解には「言葉」が必要でした。数々の作品の中でヨーコさんの作品は個人の頭の中に言葉として入り込んできます。時には命令口調で、時には優しく諭すように。
良い事があってもツライ事があっても見上げると空がある。ヨーコさんの見上げる空。東京の空、ニューヨークの空。都会に暮らす彼女の見上げる空はビルの谷間に阻まれて狭く小さなものだったのです。
空への憧れ。どーにかして安らぎの部屋へと導き入れたい。そんな衝動から「sky tv」は生まれたのでした。
「十勝千年の森」にヨーコさんの「sky tv」が展示されました。この場所に合わせたカタチでの展開です。ヨーコさんの作品全般に関わるジョン・ヘンドリクスさんがモニターの設置場所を何度も何度も通って時間をかけて決めていきました。
今回、ヨーコさん本人がサインを入れて作品が完成するとの話を聞いていたのですが、それだけではありませんでした。
モニターを設置する屋敷の内部、壁や天井や土間のソコココにヨーコさんからのメッセージが記されたのです。
「空」は誰に対しても平等に行き渡る。見上げるといつもそこには「空」がある。
十勝・帯広は確かに素晴らしく高く抜ける「空」が広がります。
当たり前に感じていたその風景に対してヨーコさんは思いを込めて「空」に接していたのでした。
あらためて見上げると「空」がありました。ヨーコさんと共に見上げたことで、ヨーコさんの見ている「空」とタカサカが見る「空」が距離を越えていつもつながっているのだなと感じることが出来ました。