月イチコラム  「コーヒー?それとも緑茶?」

コーヒー?それとも緑茶?                       022

 

「人生を変えるお茶に出会ったことがありますか?」

がうたい文句のおぶぶ茶苑のお茶。 つかこし家で25年のお付き合いのある京都に住む青年が作っています。

FLOWMOTIONでは「おぶぶの煎茶」としてメニューに出ており、お客さまからもおいしいと言っていただいています。

 

先日、京都へ行く機会があり、おぶぶの茶畑を案内してもらいました。

11月。 すでに紅葉も終わり、早朝には氷が張る十勝とは違い、木々はまだ青く、気温も暖かかったのですが、草花は色が褪せて、柿がたわわに実り、今が秋であることを教えてくれていました。

朝、車に乗り込み和束(わづか)町の茶畑へ出発!

道は大きな木津川に沿って山へ向かいます。 進むにつれ道幅が狭くなり、曲がりくねってきました。 前後左右を山に囲まれながら進んでいくと 「茶源郷、和束町へようこそ」の看板が見えました。 山あいの谷間に集落が見え、その山肌に緑色の筋がいくつも見えます。 こっちの斜面も、あっちの斜面も・・・。 集落から見える山肌は全て茶畑ではないかと思われるほど、あちこちに緑の筋があります。 それもかなりの急斜面です。

突然、車が空を見上げました。 ギュインと急斜面を昇ります。 あわわ・・・。と思っているうちに目の前に茶畑が広がりました。

「ここがおぶぶの茶畑です」

晴れつつある朝もやの中に、つやつやとした濃い緑色の畝が、陽の光を反射してキラキラと輝いています。

 茶畑。 生で初めて見たよー!!

もう興奮状態です。 前日の雨とさっきまでの霧で足元は泥だらけですが、そんなことはかまっていられません。

どちらかといえば、ふわふわとした土の感触。 生け垣のように丸く整った形のお茶の木。 木と木の間の細い道はずっと向こうまで真っ直ぐに伸びています。 ところどころに椿を小さくしたような白い花が咲いています。

テレビや映画でしか見たことのなかった風景が、今、目の前に広がっています。

陽が高くなり、霧がちぎれちぎれに山の向こうに消えるころ、ようやく茶畑から降りてきました。

 

今、大丸京都店でこのおぶぶ茶苑のお茶が飲めます。

地下のお惣菜コーナーなのですが、京都老舗料亭のお弁当を週替わりで食べられるイートインコーナーで、夕方からがおぶぶ茶屋の時間になります。

おぶぶイチオシの「かぶせ煎茶」をいただくことにしました。

かぶせ煎茶を淹れるのは白いつるりとした急須で、取っ手が無く、注ぎ口が三角になっているシンプルな「宝瓶(ほうひん)」という器です。

煎茶にはいきなり熱い湯は入れず、宝瓶→湯呑み→もひとつの湯呑み、と移し替えて少しずつ冷ました湯を静かに茶葉に注ぎます。 これもまた、白くつるりとしたおちょこ大の湯呑みに入れて出してくれました。

白い器にくぐもった感じの、でも明るい緑色のお茶が入っています。

では、いただきます。 抹茶のお点前のようで、ちょっと緊張します。

ひとくち・・・。 口に含んだとたん 「!!うおっ!」 低い声が出てしまいました。

とろりとした甘―いお茶?いや、甘い汁を飲みました。 これ砂糖入れた?

と、聞いてしまったような気がします。 驚きすぎてあまり覚えていません。

これっていつもお中元にいただいている、あの煎茶だよね? もう何年も前から知っていたのに、、知らなかった・・・。

 「はじめまして」 何年もかかってやっと本物に出会えました。

このお茶の美味しさはあんなものじゃなかった。

2煎目も甘みがありつつ、渋みも出てサラリとしたお茶。 3煎目は少し熱めでするりと飲めるお茶。 茶葉は濃い緑色から新緑のような明るい緑色になり、すっかり開いて葉っぱに戻っています。 最後に茶殻に酢醤油をかけて食べました。 くせがなく、ほんのりとした苦みがあり、柔らかくおいしいおかずでした。

 

おぶぶ茶屋を後にして、バタバタと数日を過ごし、帯広へ帰って来ました。

2~3日経ったころ、無性に「煎茶が飲みたい」と思い、戸棚からあの「かぶせ煎茶」を出して飲みました。 いや、こんな味じゃなかった。 違うのは茶葉の量か?温度か?

バタバタとして忘れかけていた記憶をたどり、おぶぶ茶屋でやっていたように淹れてみました。 すると、 うん、近い! こんな感じ! と少しずつあの時出会った味に近づいています。

 

今、煎茶を淹れるとき、茶葉が湯を含んで少しずつほぐれていく様子や、乾燥した濃い緑色からみずみずしい新緑の色に変化していく様子を見ながら楽しんでいます。

勝手にお客さんに淹れて「これ何?」「味が濃い!」などの反応を見ては、よっしゃーとまた楽しんでいます。

日が経つにつれてじわじわとあの甘い汁を思い出し、とりこになっています。

私も、人生を変えるお茶に、やっと出会えました。

FLOWMOTIONにも、おいしいコーヒーと紅茶と、新生おぶぶが加わります。

 

2011年11月   FLOWMOTIONカフェ担当 つかこしちひろ

 

P.S. おぶぶのお茶は茶畑直送、通販のみです。 おぶぶ.com でHPをご覧下さいね。